北朝鮮 で日系企業のビジネスチャンスはあるのか。基本情報から考える。

北朝鮮

2018年6月12日、米国トランプ大統領と 北朝鮮の金正恩第一書記の運命の面談が実現するのか非常に注目されるところである。

当然ここ韓国においても毎日のように関連ニュースが流れている。

タクシーに乗り込んでも、韓国人ドライバーからこのような話を振られることが多い。

まだ 米国、北朝鮮とも駆け引きをしており、実際にはどうなるのか予測がしづらいところではある。

が、わたしの周りの韓国人は既に北朝鮮に対する間口を開いており、「北朝鮮におけるビジネス」を視野に入れて動き始めている。

これはもはや無視することもできないであろう。

ということで、6月12日の運命の日に先立って、北朝鮮の基本情報から今後の日系企業のビジネスチャンスについて考えていきたい。


北朝鮮 基本情報

まずは北朝鮮の基本情報から見ていきたい。

ここではわかりやすいように韓国、日本の情報と照らして北朝鮮の基本情報を見ていく。

北朝鮮
(朝鮮民主主義共和国)
大韓民国 日本
面積 120,000km2 100,000km2 377,928km2
人口 2,515.5万人 5,127万人 1億2667万人
首都 ピョンヤン ソウル 東京都
宗教 仏教徒連盟,キリスト教徒連盟等の団体があるとされるが,信者数等は不明。 宗教人口比53.1%
(内仏教42.9%、プロテスタント:34.5%,カトリック:20.6%,その他:2.0%)
実態としては無宗教が多く宗教人口比43%。
但し数値上は神道系48%、仏教46%、キリスト教徒1%程度。
政治形態 朝鮮労働党による指導のもと管理 大統領制 議院内閣制
元首 金正恩(ジョンウン)第一書記 文在寅(ムンジェイン)大統領 安倍晋三総理大臣
議会 一院制
(最高人民会議)
一院制
(共に民主党)
二院制
(衆議院・参議院)
主要産業 農業・観光業・鉱工業 電気・電子機器・自動車・鉄鋼・石油化学・造船 自動車・エレクトロニクス・造船・鉄鋼・素材他
GDP(国内総生産) 167億8900万ドル 1兆4,112億ドル 4兆8,410憶ドル
総貿易額 輸出 4,320万ドル
輸入 4,820万ドル
輸出 5,737億ドル
輸入 4,784憶ドル
輸出 6,449憶ドル
輸入 6,076憶ドル
主要貿易国 輸出 中国、ロシア 輸出 中国、米国、ベトナム、香港、日本 輸出 アメリカ、中国、韓国
輸入 中国、ロシア、イラン 輸入 中国、日本、米国、ドイツ、サウジアラビア 輸入 中国、アメリカ、オーストラリア
通貨 北朝鮮ウォン ウォン
為替レート 1ドル=899.60 北朝鮮₩
100円=819.63 北朝鮮₩
(2018年5月頭)
1ドル=1,071.40₩
100円=949.11₩
(2017年12月末)
1ドル=109.96円
(2018年5月10日)
*外務省、JETRO、統計局等参照

 


北朝鮮の気候/地形情報

また、ピョンヤンにおける年間を通しての気候は下記図の通り。

※http://www.ryoko.info/Temperature/northkorea/pyongyang.html

さすがに近いだけあってソウルと同じような気候である。冬はマイナス10℃を下回るほどの極寒で夏は30度を超えるほどの猛暑。

そして地形の特徴として、国土の80%以上を山地が占め、国土を縦に山脈が縦断している。

最高標高は2744メートルの白頭山(ペクトゥサン)であり、当該山は活火山であり現在も火山活動を続けている。

平地は少なく国土全体の20%程度。

また、傾斜地が多いという特徴を有しており、国土の56.6%が15度以上の急傾斜地となっており、5度以下の緩斜地は国土全体の20%となっている。


北朝鮮の経済成長率

※http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2017/929.html

最近の経済成長率を見ると2016年の経済成長率は3.9%で1999年の6.1%以来、17年ぶりの大きな成長率を見せた。

過去の経緯を見ると2009年から2015年までは安定した成長を見せており、2015年に一旦は落ちたものの、2016年に再度成長を取り戻しており、制裁の影響を感じさせていない。


北朝鮮における資源

豊富な資源国である。鉱業が盛んであり、石炭も埋蔵されている。

図4-1.金の埋蔵量

総算金量
雲山鉱山 100トン
三成鉱山 62トン
昌城鉱山 43トン
栗浦鉱山 17トン
逐安鉱山 5トン
※これらを含めて全体で92か所の金山があると言われており、総埋蔵量は2000トン(世界10位)

 

図4-2.鉄鉱石・非金属鉱物の推定埋蔵量

鉱物名 埋蔵量 備考
タングステン 推定24.6万トン 世界第二位 レアメタル
モリブデン 推定5.4万トン レアメタル
銅鉱石 290万トン
マグネサイト 推定60億トン 世界一位

 

図4-3.その他資源

ウラン 推定400万トン以上 世界一位
石炭埋蔵量 推定227億トン 世界10位 (インドネシアに次ぐ)
石油埋蔵量 推定600億バレル 世界8位 (ロシアが約600憶バレル)

 

上記資源以外にも鉄鉱石、鉛、亜鉛、参加マグネシウム、石灰石などの資源を有する。

ただし、これらの鉄鋼物あるいは資源の埋蔵量について、北朝鮮の計算方法が国際基準に乗っ取ったものではないため、実際はこの30%程度になるはず との意見もあり、本当のところは専門家がきちんと北朝鮮の実情を調査しない限りはわからないと思われる。


北朝鮮の電源事情

北朝鮮の発電設備量は7.66GWと言われている。韓国の105.885GWと比較すると実に約14倍もの差がある。

北朝鮮における発電設備内訳としては化石燃料による発電設備量が全体の47.4%、水力による発電設備量が52.6%と言われている。

発電所は大型発電所が68か所、中小型発電所を含めると約1180の発電所がある。が、効率が悪いことなどもあり、その利用率は30%に過ぎず、韓国での発電設備利用率が70-80%であることを考えるとその差は明らかである。

また北朝鮮内の火力発電所のうち78%が30年以上使用されている。火力発電所の65%が大規模は改修・補修・廃棄またはリニューアルが求められている。

更に北朝鮮内の52.6%を占める水力発電設備の老朽化も深刻であり、53%が全面取り換えの対象。

資源が限定されており自給しなくてはいけない背景から再生可能可能エネルギーの活用にも注目をしている。現在は自家用太陽光が注目されており、中国産のソーラーパネルが北朝鮮に進出している。また、風力発電についても納入が進められている。

具体的な北朝鮮における電力需要は不明だが、電力が足りていないことは明らかであり、そのために国内での産業や製造業が十分に進められないというのが北朝鮮における実情。

豊富な資源もそのために宝の持ち腐れとなっている。


今後の北朝鮮の展望

上記の通り資源を豊富に有しており、貿易の制限さえ解除されれば一挙に一大ビジネス市場になる可能性を秘めている。

ただし、それらの資源を有効活用するにも、まずは足りていない電力を賄うための電力インフラの整備が最重要優先課題となる。

一方で現状の北朝鮮の送配電網設備や、電源規模では大型の発電所の建設はすぐにはできないという見方もされており、当面の対策としては韓国やロシア、中国といった隣国からの送電経路の確立、北朝鮮内の送電網設備の最新化(現在使用されているものは古い設備で送配電ロスが20%にもなる。日本・韓国での送配電ロスは5%程度)が短期での発電対策になると予想される。

いずれにせよ発電と変電、この両輪を同時に解決しないことには北朝鮮におけるインフラが整備されたとは言えない。


今後の日系企業の取り組み

ここからは今までの情報に基づくわたしの予想ですが、やはり電力整備が急務とはなりますが世界一位のウランが埋蔵されているからには原子力発電所の建設を将来的には考えそう。

しかしやはり原子力発電所の建設をいきなり始めるにはそれなりのノウハウや知識、何より時間がかかることを考えると原子力発電所の建設はしばらくはないでしょう。

また、石炭資源が豊富にあることを考えると、石炭火力か?とも思いますが、現在の石炭に対する世界的な風当たりの強さを考えるとこれも簡単には進まなさそう。。。

ガス火力発電所に建設するにしても天然ガスの輸送経路が確立していませんから、これもまたすぐには難しそう。

ということで、まずは既存送電設備の整備、既存発電所の補修/改修 といったところから北朝鮮のインフラ整備は始まるのだろうな と思います。

そうなると韓国の重工会社大手がこぞって手を挙げるでしょうから、果たして日系企業にそこに入り込む余地があるのか というところ。。。

もう少し高度な技術を要する 新設発電所の建設、新設製油所 というところにはチャンスがありそうですね。

また、電力対策としての電力効率化を図る市場についてもチャンスがあるのでは と期待しています。

どうなるのか注目です。

決戦は6月12日!

⇒ 2018年9月末追記 6月12日以降 米朝の関係は一旦は危ぶまれたものの、再度軌道修正されている模様。とはいえ、一気にすべてが進むというのはやはり難しい様子。

まずは北朝鮮の非核化を推し進めて、北朝鮮に「核弾頭」の交渉カードをなくさせない限りは、それ以上の対話や進展には進まない様子。

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です